これからソロ(単独)登山にチャレンジするあなたへ

ソロ登山

 私は登山の7、8割をひとりで登っています。でも、最初からひとりで登っていたわけではありません。始めたころは一緒に登る人がいましたが、山行を重ね、少しずつスキルが上がってくると、登りたい山も合わなくなってきました。二人とも会社員のため、お互いの予定が合わないことも増えてきて、いつの間にか一人で登ることが多くなりました。

 ひとりで登ってみると、誰かと一緒に登るのとは違った楽しさ、自由さ、面白さがあります。しかし、世間では“ひとりで登るのは”危険だ!”とか”無謀だ!”と叫ばれていることで不安に思い、ソロでの登山を躊躇されている方もいるでしょう。

 こういった方のために、少しでもソロ登山の不安を少なくするポイントを紹介します。

ソロ登山の良いところ

自分のペースで歩くことができる

 グループでの登山では、遅い人にペースを合わせるとか、自分がつらくても歯を食いしばってついていく、写真を撮るのもままならない、といったことから開放されます。

あくまでも自分のペースで山と向き合うことができます。

時間も行く場所も行動が自由

 ひとりなら行きたいところへ行き、行きたくないところには行かない。100%自分の意思で決めることができます。誰も文句を言う人はいません。

地図とコンパス

同行者に気を使わない

 もし同行者が初心者だったら、「疲れてない?休憩する?」、「水分取った?」などなど…。
疲れも2倍になりそうです。

自然をひとり占めできる

 気の合う仲間で同じ景色を見て分かち合うのもいいのでしょうが、ひとりだと感動をすべて受け止めているように感じます。

大自然をひとり占め

スキルが上がる

 ひとりで歩くからには誰にも頼れないので、必然的にできることが増えていきます。あくまでもひとりなのでスキルの向上は少しずつですが、上達したことを実感できると嬉しいものです。

遭難

ソロ登山の不安なところ

選んだコースを歩ききれる体力があるかどうかわからない

 ソロのためいつもより重たい荷物で、初めて歩くコースだと、予定時間通りで歩けるのか想定しにくいです。自分の体力の見誤りは遭難に直結してしまうことが頭をよぎります。

準備した荷物で大丈夫だろうか

 荷物を分担することはできないため、少しでも軽くしたいが、万が一のための荷物は削りたくない。装備の選択にどうしても不安が残ってしまう。

天候の急変や道に迷うなど、ひとりで対処できるだろうか

「何かあったどうしよう⁉」ソロの登山で一番不安に思うことはここではないでしょうか。

ソロ登山の不安を軽くする5つのポイント

 ソロでもグループでも、登山で不安(リスク)を無くすことは不可能といえます。でも、不安を無くすことはできなくても軽くすることはできます。

事前の情報収集を行う

 知らないことでより不安は高まります。営業小屋や避難小屋の有無、水場の有無、鎖場や危険な場所など事前に調べて知っておくことで気持ちに余裕が生まれます

 インターネットで検索すればいろいろな情報を入手できます。でもここで注意しなければいけないことは、情報を鵜呑みにしないことです。仮に「危険な場所はありませんでした」と書いてあっても、どのようなレベルの登山者が書いているかわかりません。なるべく新しい、複数の人の記録をチェックすることをお勧めします。

登山中に起こりそうなことを前もってイメージしておく

 事前に収集した情報の中に「道に迷った」、「迷いうそうになった」などがあれば、あらかじめ場所を確認しておく(地図に印をつけておく)とか、もし迷ったとわかったら“必ず戻る”と決めておきます。

 天気が崩れそうな予報が出ているときは、小屋などの雨宿り(停滞)できる場所を探しておく。どれぐらい降ったら引き返すなど、あらかじめ行動を決めておくことで落ち着いて行動できます。

無理のない登山計画を立てる

 最初のうちは「ちょっと頑張れば行けるかも」といった計画は立てないことです。登山でアクシデントは付きものです。気持ちが焦り、致命的なミスを犯さないためにも時間には余裕を持った計画を立てるべきです。

最初はメジャーな山とコースを選ぶ

 ソロで歩くことに慣れるまでは、メジャーな山域とコースで山小屋の営業している時期から始めることをお勧めします。比較的登山者が多いコースなら少しは安心ですし、万が一の時、山小屋が営業していれば助けを求めることもできます。

 ただし、いくらメジャーな山といっても平日は登山者も少ないところもあります。山小屋も予定より早く営業を終了してしまうこともありますので、事前に調べておく必要があります。ちなみに私の最初のソロ登山は初夏の八ヶ岳の蓼科山でした。

登山届は必ず提出、家族にも連絡をしておく

 最近では、登山届の提出を条例で定めている県も増えてきました。登山届を出したからといって遭難が減るとは思いませんが、登山届に計画や装備などの内容が正確に記載されていれば、万が一の時の捜索も早くできる可能性は高くなります。もし道に迷って何日も連絡が取れなかったら、仕事は無断欠勤、運よく助かっても会社は解雇ということにもなりかねません。登山届の提出は良識のある登山者のマナーとして行ってほしいものです。

 家族もしくは勤務先などへの連絡も大切です。あなたの姿を見ないことに不安を感じてくれる人に、登山計画、下山予定日、予備日の有無などを連絡しておきましょう。私の身内に山で迷って一晩過ごした人がいます(登山ではありませんが)。家族に行き先を連絡してあり、携帯が通じた時もあったので大ごとにはなりませんでした。山中で一晩過ごして無事に帰ってきましたが、やはり心配なものです。

まとめ

 世間では、ソロ(単独)登山はパーティ(グループ)登山より危険だとか無謀だと言われます。でも本当にパーティなら安全なのでしょうか。万が一の時、親交目的の仲良しパーティは誰が舵取りをするのでしょうか。リーダーが決まっていたとしても、ソロ(単独)でもパーティでも舵を取るのは基本的にひとりです。

 ただ、ソロの場合は前を見ても後を見ても自分ひとりしかいません。致命的なミスをしないためにソロ登山者は臆病であるべきです。そして、不安とリスクを低減することを十分考慮すれば自由と責任と大自然を大いに楽しめる新しい世界が待っています。

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