日帰りの登山を何度か経験すると、もっと自然を感じたくなり山で一夜を過ごしてみたくなります。最初は山小屋に泊まるでしょう。さらに、沈んでいく夕日をいつまでも眺めていたり、シーンとした静寂の中で満天の星空を眺めたりと、より自然の営みを感じたくなってテントで泊まってみたくなります。
でも、テント装備で重くなった荷物を担いでどれだけ歩けるか、どんなテント場を選んでいいのか、わからないことばかりで不安が先行してしまい、なかなかテント泊に踏み出せないのではないでしょうか。
このページでは、初めてテント泊をするときのテント場を選ぶ4つのポイントとおすすめのテント場を紹介します。
私がテント泊登山を始めて10年以上たちますが、失敗した経験も含めて初めてのテント場を選ぶときの条件をまとめました。
衣食住すべてを背負って山を歩き、刻々と変化する自然を身近に感じて、キツいけれどもそれ以上の達成感を味わえる。テント泊登山には魅力がたくさん詰まっています。
初めてのテント場を選ぶときの4つのポイント
せっかくのテント泊なので絶景スポットのあるテント場に行きたいと思うかもしれませんが、初めてのことばかりなので無理は禁物です。
なぜなら、あまり経験のないうちから無理すれば“遭難”というリスクが付きまとうからです。
例えば重い荷物を背負って長時間歩くため疲労困憊で動けなくなってしまうとか、天気が急変し悪天候に見舞われてしまうこともあります。
最初は無理をせず、テント泊を経験することを目的としてテント場を選ぶべきです。
※このコンテンツはテント泊登山に適している梅雨明けから9月下旬までの時期を想定しています。また、新型コロナウィルスの影響によりテント場等の営業形態(予約が必要など)が変わっていることがありますので、事前に山小屋等に確認することをおすすめします。
樹林帯にあるテント場(稜線上は避ける)

最初は稜線上のテント場は避け、樹林帯などにあるテント場を選びましょう。
なぜなら、稜線上だと天候の影響を受けやすくトラブルの起こる確率が高くなるからです。
例えば、麓では穏やかだった天気も、稜線に出ると強風が吹いていたということはありませんか。強風の中でテントを設営することはとても大変です。それに夏の稜線は突然の雷雨に遭遇することもあります。対処方法を身につけておかないと対応できないこともあります。
2回目のテント泊で北岳山荘に行った時です。初日はそこそこ天気もよくテントを設営し夕食を取ったまでは良かったのですが、夜中に大荒れとなり雨風の音と不安でほとんど眠ることができませんでした。翌日も天候は悪かったため縦走する予定をやめて下山しました。まだ慣れない重さの荷物を担いで稜線を歩くことにとても不安を感じたことを覚えています。
天候の悪いときの対応方法を経験しておくことは必要ですが、テント泊の流れを掴むためにも天候の影響の少ない樹林帯などのそれほど標高の高くないテント場にしましょう。
近くに山小屋があるテント場

トイレや水場も含めて山小屋に併設されているテント場を選びましょう。
なぜなら、初めてのテント泊なのでトラブルが発生したときに、自分では対処できないことが起こってしまうかもしれません。どうしようもないときは山小屋に避難(山小屋泊に変更)することができます。
例えば、テントのポールを忘れてしまったとか、途中で雨が降ってきてシュラフを濡らしてしまったなど、テント泊を続けられなくなってしまうこともあります。
初めてのテント泊では、いざというときに緊急避難できる山小屋が近くにあると心強いです。
登山口から近いテント場 ~目安は2時間程度
出典:地理院地図
登山口から近いテント場を選びましょう。目安としては登山口から1~2時間程度のコースタイムが安心です。
なぜなら、テント泊装備はいつもより重くなり、慣れない重い荷物を担いで長時間歩くことはリスクが大きくなってしまうからです。
例えば、疲労で動けなくなって救助を呼ぶという事例はありますし、救助を呼ばないまでもテント場にたどり着けず途中でビバークすることになってしまうかもしれません。
私が最初にテント泊したのは南アルプスの鳳凰小屋でした。小屋も近くにあり樹林に囲まれた雰囲気の良いテント場です。青木鉱泉から入山したのですが、小屋まで6時間以上掛かり着いた時には疲れ果てまともに夕食を作って食べられなかった記憶があります。
自分はテント装備を担いでどれぐらい歩けそうか、確認する意味でも登山口から近いテント場にしたほうが良いです。
ベースキャンプ型登山ができるテント場

初めてのテント泊といえども、ちゃんと山には登りたい。だったらベースキャンプ型の登山ができるテント場が良いです。
なぜなら、テント泊の重たい荷物はテント場に置いておき、必要なものだけを持って軽い荷物で山頂を目指せるからです。
例えば、テント場を出発して2~3時間ぐらいで戻ってこられるなら、水、行動食、レインウェアなど必要な荷物を選んで登れば体への負担が少なくて済みます。
ベースキャンプ型にすることで、テント泊とピークハントの両方を楽しめる登山になります。
初めてのテント泊 おすすめのテント場5選
八ヶ岳 赤岳鉱泉
赤岳鉱泉の周辺にあるテント場でトイレや水場もあります。小屋で夕食、朝食の注文ができ、期間は決まっていますが入浴も可能(別途入浴料が必要)。赤岳や硫黄岳にアタックする場合のベース基地になっていて人気のあるテント場。
赤岳や硫黄岳を往復したり、硫黄岳~横岳~赤岳の周回にすることもできるので自分の体力に合わせてコースを選べます。
出典:ヤマレコ
標高 | 2300m |
幕数 | 150張 |
料金 | 1,000円/人 |
コースタイム | 美濃戸より2時間 美濃戸口より3時間 |
周辺の山 | 赤岳 横岳 硫黄岳 |
南アルプス 白根御池小屋
池のほとりにある森の中のテント場でトイレや水場も近くにあります。北岳を目指す人の多くは北岳肩の小屋とか北岳山荘まで行くため、狭いですが比較的空いている穴場的なテント場。
北岳を往復するコースタイムは4時間15分となっていますので早めの行動が必要です。
出典:日本アルプス登山ルートガイド
標高 | 2200m |
幕数 | 40張 |
料金 | 800円/人 |
コースタイム | 広河原より2時間15分 |
周辺の山 | 北岳 |
北アルプス 雷鳥沢キャンプ場
立山や奥大日岳のベース基地になる広いテント場でトイレや水場も近くにあります。雷鳥沢ヒュッテやロッジ立山連峰で日帰り入浴も可能。室堂から45分と短い時間でテント場に着いてしまいますが、3000m級の山々の雄大な景観とテント泊を楽しむ時間が増えます。
雄山を往復するのもいいのですが、できれば早めに行動し始めて立山三山を周回したい。
出典:とやま観光ナビ
標高 | 2280m |
幕数 | 250張 |
料金 | 500円/人 2泊以上は1,000円/人 |
コースタイム | 室堂より45分 |
周辺の山 | 立山連峰 奥大日岳 |
北アルプス 白馬大池山荘
池のほとりにあるテント場でトイレと水場も近くにあります。周辺には湿原が広がっていて、高山植物の花が咲き乱れます。人気のあるテント場なので週末は混雑します。また、標高が高く稜線に近いところにあるので天候の影響は大きい。
小蓮華山までのコースタイムは往復2時間30分ぐらい、後立山連峰の雄大な景色を眺めつつ稜線歩きが楽しめます。
白馬岳の往復は不可能ではありませんがお勧めできません。時間と体力を要するため計画は慎重に立てる必要があります。

標高 | 2380m |
幕数 | 30張 |
料金 | 1,300円/人 |
コースタイム | 栂池自然園より2時間15分 |
周辺の山 | 小蓮華岳 白馬乗鞍岳 |
頸城(くびき)山塊 高谷池ヒュッテ
湿原のほとりにあるロケーションの良いテント場。休日が絡むと狭いテント場だけに非常に混み合い、到着が遅いとテントの設営場所に苦労するかも。水場はありますが池の水なので煮沸が必要。トイレは小屋内のトイレを使用、靴を脱がなければいけないのが面倒でした。
笹ヶ峰登山口からコースタイムで3時間5分で少し長め。おすすめとしてはテント設営後、初日に火打山に登り、2日目に妙高山を往復。

標高 | 2114m |
幕数 | 30張 |
料金 | 1,000円/人 |
コースタイム | 笹ヶ峰登山口より3時間5分 |
周辺の山 | 火打山 妙高山 |
まとめ
テント泊登山においてテント場選びは重要な要素のひとつです。最初に苦い経験をしてしまうと、二度とテント泊はしたくないと感じてしまうかもしれません。
初めてのテント場は、稜線上を避け、山小屋があり、登山口から近く、ベースキャンプ型の登山ができる、この4つのポイントから選ぶことでテント泊が成功しやすくなります。そしてダイナミックな自然の中で過ごす醍醐味を味わうとともに達成感を得ることができるのです。
この記事がテント泊登山で迷っているあなたに、新たな登山スタイルの挑戦に役立てばと思います。
コメント