9月5日~6日 天気に振り回されながらも不帰の嶮を歩く
後立山連峰屈指のハードコースのひとつである不帰の嶮を通る、杓子岳から唐松岳を縦走ました。
九州には台風が近づいていてはいるものの、北アルプスの北部には影響が少ない予報がされていましたが、やはり3000m近い稜線ともなると影響はゼロではありませんでした。
悪天候により引き返すことも念頭におき、ダイナミックな岩稜にチャレンジしてみました。
=コースタイム=
1日目
猿倉(5:20) ▶ 白馬尻小屋(6:10) ▶ 岩室跡(8:05) ▶ 白馬頂上宿舎(9:40) ▶ 杓子岳(11:00) ▶ 白馬鑓ヶ岳(12:00) ▶ 鑓温泉分岐(12:30) ▶ 天狗山荘(12:50)
活動時間(休憩含む):7時間30分
2日目
天狗山荘(5:05) ▶ 2411m地点(6:30) ▶ 一峰(6:50) ▶ 二峰北峰(7:40) ▶ 二峰南峰(7:55) ▶ 唐松岳(8:45) ▶ 唐松岳頂上山荘(9:00) ▶ 八方山(10:25) ▶ 八方池山荘(10:40)
活動時間(休憩含む):5時間35分) 累計標高差:上り2781m 下り2186m
登山口と駐車場
写真は撮れませんでしたが、猿倉荘手前に未舗装の無料駐車場があります。ガイドブックによると150台ぐらい停められるとことです。
人気のある山域の登山口なので、夜中にはすでにたくさんの車であふれていたような記憶がありますが、この日はAM5:00の時点でガラガラでした。

登山口にある猿倉荘です。トップシーズンだとたくさんの人が準備をして賑わっているのですが、ここで見かけた人は10人もいません。
登山届のポストがありますので提出します。

登山口には男女別のトイレがあります。白馬尻小屋が営業していないため、ここから頂上宿舎までトイレはありませんのご注意を。
猿倉登山口 ~ 杓子岳 ~ 白馬鑓ヶ岳 ~ 天狗山荘

トイレも済ませ、準備が整ったのでスタートです。

猿倉山荘の裏側から登山道に入ると、すぐ林道に出て30分ほど歩きます。
ここからは本格的な登山道になります。道幅はそれほどありませんが整備されています。

白馬尻小屋に到着。雪が多ければ、ここから少し登ったところで雪渓に入りますが、今年は(も?)とても短くなっているようです。

雪渓を通れないときは右岸に道が作られています。斜面に作られた道なので滑りやすく、ザレて歩きにくいところもたくさんあります。つまずいたりスリップしたりしないよう注意して歩きます。

3週間ほど前まではこのあたりから雪渓に入ることができましたが、今はずっと上まで行かなければなりません。

ここが雪渓の取り付きになります。画像左上が雪渓終了地点です。距離にして200mもないくらいですか…。

雪の表面が溶けて凸凹しているためアイゼンは必要ありませんでした。
左岸から大きなクラックが入ってきています。これが進むと雪渓が歩けないなんでこともあるかもしれません…。

雪渓を過ぎても急登は続きます。
青空と新緑の緑と白い巨石のコントラストがきれいです。

スタートして4時間20分で白馬岳頂上宿舎に到着です。

3週間ほど前に利用したテント場です。この脇(右側)を抜けて稜線に出ます。

4羽のライチョウに出会いました。これから天気が崩れてくるということでしょうか??

杓子岳への上りです。ここからグンと勾配が増して、まるで壁を登っているかのようです。

杓子岳の山頂に到着。タイミングが悪くガスの中でした。

次に白馬鑓ヶ岳に到着。ここも壁を上ってくるような急勾配です。

鑓温泉分岐です。残念ながら今シーズンの鑓温泉小屋は休業、登山道も通行止めです。

猿倉登山口から7時間30分で天狗山荘に到着しました。一部リニューアルした山荘は雰囲気のあるきれいな小屋です。
受付を済ませて、すぐにテントの設営に取り掛かりました。

テント場です。50張ほど設営できるようです。よく整地されていますが、広いスペースの場所は少ない感じです。トイレは小屋の外トイレを使用。個室が2つ、男子用が1つしかありませんので、テント利用者が多いときは混雑が予想されます。
今日はテント場一番乗りでした!

この日は一日中、雲が掛かったり切れたりの繰り返しでした。テントを張りまったりしていると、雲が切れてきて白く大きな白馬鑓が目の前に現れます。青空に生える白馬鑓の姿が印象的でした。このテント場の魅力のひとつですね。

今日の夕食は明太高菜ご飯とスープです。
夕食を済ませ片づけをしていると、ゴロゴロという音が聞こえ始め、一時間後ぐらいには土砂降りとなり、雷鳴が響き渡りました。
2時間ほどで雷雲は通り過ぎ、その後は星空が広がっていました。
明日の好天を願いつつ、一日目終了です。
天狗山荘 ~ 不帰の嶮 ~ 唐松岳 ~ 八方池山荘
2日目はAM3:00起床です。テントの外は、暗いながらもガスに覆われていることがわかります。

出発する少し前から雨が降り始め、稜線を吹き抜ける風も強く感じるようになってきています。更に天候が悪化したら引き返すことも念頭に置き出発しました。

天狗の頭です。ガスに囲まれ展望は全くないものの、視界はそれほど悪くありません。ここから少しばかりのアップダウンはあるものの下りの登山道になります。

ここから天狗の大下りに入ります。不帰の嶮の入口ですね。

ガスに覆われ先のほうまで見えないものの、険しそうな下りが予想できます。

天狗の大下りには2、3カ所のクサリ場があります。そのうちの一番長い場所です。上から下ってきました。

最低鞍部から一峰まではさほど危険なところはありませんでした。ここから二峰が岩場、クサリ場の連続し細心の注意が必要になります。特に北峰の北斜面は切れ落ちているクサリ場や、岩壁をトラバースするようなところが次から次へと出てくるので気を緩めないように。
手持ちや足場はありますが、すれ違いには気を付けなければなりません。お互いにすれ違う相手に気遣いながら、余裕のある場所ですれ違うようしないと危険です。やはり、なるべくすれ違いが起こらない時間帯を意識して通過することも大切です。

重い荷物と滑る岩肌に注意しながら北峰に到着しました。

南峰に着くと、北側の雲が切れ歩いてきた稜線が見渡せました。大きく下り、荒々しいところを登ってきたことがよくわかります。ここから先は危険なとことはないのですが、気を緩めず唐松岳に向かいます。

三峰に気づかず、唐松岳に到着してしまいました。二峰の南峰は良い天気だったのに、ここは雨の中でした。山頂には誰もいません。長居することなく、早々に山頂を後にしました。

唐松岳頂上山荘を少し過ぎたあたりでライチョウを発見。

唐松岳からの下りは、ヤセ尾根を通るので滑転落に気を付けなければなりませんが、よく整備されたコースで危険と思われるところは見当たりません。人気のあるコースなので、時間帯によってはたくさんの上りの人と出会います。すれ違いの時は臨機応変に対応することが大切です。
コースの感想
天気に恵まれれば対面する剱岳や立山連峰を眺めつつ、高山植物やダイナミックな岩稜を楽しめるコースです。しかし安易に初心者が入っていいコースではありません。天狗の頭から唐松岳までの間は、連続する岩場やクサリ場を通過するだけの基本的な技術や、アップダウンを繰り返す稜線を5時間近く歩き通せる体力が必要になります。この間はエスケープルートも小屋も無いため、非常時の対応力も必要です。岩場の経験の少ない初心者の方はベテラン登山者がいれば安心できます。
そして、このスリルに満ち溢れた岩稜のコースを歩き切ったならば、安堵感と達成感と充実感に心満たされることと思います。
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