10月4~5日 先人たちの築いた断崖絶壁のルートを歩く
登山を始めたころからずっと気になっていた下ノ廊下。年によっても違いますが、9月下旬から10月末ごろまでの1ヶ月ちょっとしか開通していないので、今まではなかなかタイミングが合いませんでした。
幸いにして今年は歩けるチャンスが巡ってきたので、紅葉にはまだ早かったのですが初秋の黒部峡谷を歩いてきました。
今回選んだコースは、黒部ダムからスタートして旧日電歩道を通り阿曽原温泉小屋でテント泊します。二日目は阿曽原温泉小屋から水平歩道を通り欅平に向かうルートとしました。
山と高原地図のコースタイムは、黒部ダム→阿曽原温泉小屋:7時間40分、阿曽原温泉小屋→欅平:5時間 合計で12時間40分の行程です。
富山県 山のグレーティングピッチマップでは、別山谷周辺が難易度E(※2)、内蔵助出合~別山谷手前とタル沢周辺~十字峡が難易度D(※1)となっています。
難易度の高いコースであり落石や滑落の危険もあるので、ヘルメットと簡易ハーネス、カラビナとスリングを用意しました。
※1 難易度D
【登山道の状況】
◇厳しい岩稜や不安定なガレ場、ハシゴ・鎖場、藪漕ぎを必要とする箇所、場所により雪渓や渡渉箇所がある
◇手を使う急な登下降がある
◇ハシゴ・鎖場や案内標識などの人工的な補助は限定的で、転落・滑落の危険個所が多い
【技術・能力】
◇地図読み能力、岩場・雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要
◇ルートファインディングの技術が必要
※2 難易度E
【登山道の状況】
◇緊張を強いられる厳しい岩稜の登下降が続き、転落・滑落の危険個所が連続する
◇深い藪漕ぎを必要とする箇所が連続する場所がある
【技術・能力】
◇地図読み能力、岩場・雪渓を安定して通過できるバランス能力や技術が必要
◇ルートファインディングの技術、高度な判断力が必要
◇登山者によっては、ロープを使わないと危険な場所もある
― 富山県 山のグレーティングより ―

=実際のコースタイム=
【1日目】
黒部ダム(5:50) ▶ 内蔵助出合(6:50) ▶ 別山谷出合(8:30) ▶ タル沢出合(9:00) ▶ 十字峡(9:45) ▶ 半月沢出合(10:45) ▶ 東谷吊橋(11:25) ▶ 仙人ダム(11:40) ▶ 阿曽原温泉小屋(12:30)
【2日目】
阿曽原温泉小屋(6:45) ▶ 折尾ノ大滝(8:00) ▶ 志合谷(9:10) ▶ 欅平上部(10:30) ▶ 欅平(10:55)
活動時間(休憩含む):1日目 6時間20分 2日目 4時間10分 距離:26.6km
【1日目】黒部ダム ~ 阿曽原温泉小屋
登山口と駐車場
黒部の玄関口である扇沢駅から電気バスになって黒部ダムに向かいます。扇沢駅から黒部ダムまでの料金は1,570円。11月30日まで営業していますが、時期により時刻表が変わりますので、利用時には確認が必要です。
扇沢駅の下段に有料駐車場があります。道路を挟んださらに下には230台の無料の市営駐車場があります。
マイカーの回送サービスもありますので、詳しくはこちらを
黒部ダム ~ 十字峡
明るくなってきた5時50分に黒部ダムをスタートしました。

ホームを通り過ぎ正面の看板を左に曲がったところが下の廊下への入口です。

入口には事故とクマに注意するよう張り紙がたくさん貼ってありました。
男女兼用の水洗トイレがあります。ここから先は阿曽原温泉小屋までトイレはありませんので注意してください。
出口を右に曲がって林道に出ます。

ここから本格的な登山道に入ります。
昨年は5件、今年も1件死亡事故が起きていますので、注意喚起は再三出てきます。
林道に出て下り大きく左に曲がります。そのあと50mぐらい進むと右に曲がらなければここに来ることができません。右に大きく曲がるところをまっすぐ進んでしまい鍵のかかったフェンスに出たら間違いですので引き返してください。

黒部ダムの河床に着きました。観光放水をしているので辺り一面濡れてます。

河床にかかる橋を渡って対岸に出ます。放水のせいで濡れているのでスリップに注意します。
川の水量が多いと橋が流されてしまうことがあります。今年は3回掛け変わっているそうです。この橋が流されると対岸に渡ることはできないので、そこで計画は終了となってしまいます。

内蔵助谷出合です。ここの右下の道に進みます。

この丸太橋を渡って、いよいよ旧日電歩道に入ります。
といっても最初のうちは今までの登山道とさほど変わりません。

鳴沢小沢を過ぎたあたりから、旧日電歩道らしい景観が現れてきます。

まだ残雪がありました!こんなに標高が低いのに…。
危険な箇所をいくつか並べてみました。道幅が狭いので、つまずいたり、スリップして万が一滑落したらケガでは済まない場所がたくさんあります。
荷物を少なくして52リットルのザックで来ましたが、天井や壁に擦った場所もありました。上も下も左側にも細心の注意を払って歩く必要があります。
今回、危険な場所でのすれ違いはありませんでしたが、もしすれ違いがあったときは、なるべく安全な場所で手摺り用の番線で確保してすれ違いをしてください。

ここを通過するときは濡れます!
高価なカメラなどを持っているときは濡れ対策が必要です。
画像の左の方は落石の上を歩くのでとても崩れやすくなっています。

十字峡に到着しました。広場になっていて休憩するには良いポイントです。
画像右の石の脇から下りていくと十字峡の撮影スポットに行けます(赤い矢印あり)。ちなみに登山道は左側。

撮影スポットまで下りてみました。右が棒小屋沢、左が剱沢です。見事に”十字”になっていました。

剱沢は流れ込む少し手前が滝になっていました。
十字峡 ~ 阿曽原温泉小屋
十字峡の広場で少し休憩して先に進みます。

剱沢を渡るための吊橋です。一人ずつと注意書きがありますので守りましょう。想像以上に揺れますので高所恐怖症の人は覚悟を決めてから渡ってください。

渡る途中で下を覗いてみました。高度感あります。

S字峡まで来ました。ここまで来ると黒部第四発電所が近いです。

S字峡の写真を撮ろうと思ったのですが、この辺りはずっとうねっていてどれがS字峡かわかりません…。

発電所が見えてきました。独特の形をしていてなんとも可愛らしい。

東谷吊橋です。十字峡の吊橋よりも長いです。ここもそこそこ揺れますよ!

東谷吊橋を渡ると道は左に折れて、階段を上ると林道に出ます。この林道をしばらく進みます。

仙人ダムが見えてみました。

階段を上って堤体を渡ります。
渡り切ったら右側にある階段を下ります。

中に入って右に進み、あとは表示通りに行けば抜けられます。

ここも登山道の一部です。

ここから外に出ます。高熱隧道の脇を通ってきましたが、ホントに暑い‼
この後、関西電電力 人見寮の前を通り急坂を上り、しばらく平らな道を進み、また下ると阿曽原温泉小屋に到着します。


宴会場ができていました。
受付を済ませて急いでテントを設営、掃除したばかりという露天風呂へ!
一番風呂をいただきました。

テント場です。30張とのことですが、もう少し張れそうですね。
トイレも水場もあるので大変便利なテント場です。

テント場から歩いて5、6分下ったところに露天風呂があります。女性客がいたら時間制になるらしいのですが、今のところいませんので自由に入ることができました。

至極のひとときです。

夕食はひとりキムチ鍋です。
【2日目】阿曽原温泉小屋 ~ 欅平
2日目の朝です。AM6:45 予定通り雨の中をスタートします。

テント場から最初は急登で、そこそこ長い距離を上ります。あさイチにはキツい登りです。
登りが終わり勾配が緩やかになっても、しばらくは樹林帯の中を歩きます。小さなアップダウンの連続で、意外と体力を消耗します。ただし、樹林帯の中といっても谷側は切れ落ちた崖になっているので、注意して歩く必要があります。

折尾の大滝です。落差があるのでとても迫力のある滝です。

オリオ谷の下をくぐるトンネルです。このトンネルは短いのですが出入り口が階段になっています。この階段が暗くて見えないのでヘッドランプなどの照明を用意したほうが安全です。
水平歩道も落ちたらケガでは済まないような場所がたくさんあります。昨日から気を使って歩き続けているところが多いので、精神的に疲れてきますが、ここは気を緩めず歩き続けられる体力が必要です。

志合谷トンネルの入口です。看板に書いてある通り照明は必須でした。このトンネルは距離も長く、狭いし天井も低いです。水が溜まっているところもあり、場所によっては足の甲まで水が被るところもありました。

トンネルの出口です。入口も出口も中に入ることをためらいたくなるような見た目です。

トンネルを過ぎ対岸を見てみると岩壁を削って道を作ったことがよくわかります。それに、落ちたらどうにもならないですね…。

岩をくり抜いてトンネルを作ってます。頭上注意!

欅平上部まで来ました。あとは下るだけです。

AM10:55 欅平到着です。この下りは濡れていると滑りやすいところばっかりですので注意が必要ですね。疲れた足にはとてもきつかった。
結局、小降りになったものの雨は止みませんでしたので、早々に宇奈月に向かいました。もちろんトロッコ電車は窓付きにしましたよ。

日帰り温泉はここ、湯めどころ宇奈月 入浴料510円。
2階と3階にお風呂があります。浴槽や洗い場も多く、広々したお風呂でした。
まとめ
このコースは、誰もが気軽に来ていいとは思いません。標高差が少ないとはいえ、距離は長く、小さなアップダウンの連続で、頭上、足元、すれ違いなど、すべてのことに気を使って歩き続けるだけの体力と精神力が必要な上級者向けのコースです。
暗くなってから小屋に着いたとういう話もよく聞きます。
自信がなければやめておく、またはガイドを依頼することをおすすめします。
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